淡海 湖西で にょろにょろと
|
書いてるのは14日だったりする。が、13日の話である。
11/13は、もともと1ヶ月程前の予定では実家に帰っているはずだった。と言うのも、実家の方では『二十二日講』という、数ある仏教行事の中でも、門徒がその自宅で行う最大規模の物(実は良く分かってない)を2週間後に控えているので、出来れば色々手伝いをしたかったのである。 ところが、1週間程前に火災報知設備の点検の話が舞い込んできた。さすがに集合住宅に住んでいるからには点検しないわけには行かない。まぁ、ここんとこ忙しかったのもあるので休養にはもってこいだろう…と思い、実家には申し訳ないがその旨伝え、二人で掃除などしつつ居たのである。
ところが金曜の夜、ちろ爺からメールが来る。「明日、湖西の方に行くけど、メシでも一緒せぇへん?」とのこと。行きたいのはやまやまだが…13日午後に点検の予約を入れてしまっていた。午後終わってからなら行ける…との旨返信。ちろ爺には湖西の方で待っててもらうことになる予定だった。 土曜の朝、起きて早速掃除を始める。思った以上に早く掃除が済んだので、『早めに来てもらえないかな』ということになり、管理人さんに相談をしてみると「今他のマンションに行っているけど、すぐ来るとのことです」と快諾。まぁ午前中に来てくれたらイイや…と思い、とりあえずゲームでもして待っていようと電源を入れた。データをロードし、さて次のイベントでも…
「あの〜スンマセン、消防設備の点検ですけど〜」
早!!3分経ってないよ!?
「んじゃ始めますんで〜
…
……
………ハイ、アリガトウございました〜。」
はやっっ!!2分かかってないし。
思った以上に早く終わった旨、メールする。「早!!まだこっちは仕事片付けてないよ」と驚かれる。そりゃぁそうだ、ただでさえ午後の予定、しかも待っているつもりですら居たちろ爺としては青天の霹靂であろう。とりあえず時間を決めて、成安造形大学で会うことにした。
とりあえず車を走らせ、成安造形大学に向かう。途中かなり混雑していたので間に合わないかと思ったが、どうやら雄琴駅でひろうことが出来そうな感じだったので、駅まで車を走らせる。駅までは数分の距離。駅前ロータリーに車を入れると、バス停でちろ爺がバスを待っていた。我々の一台前が、成安行きのバスである。慌てて車の窓から手を出してアピールする。何とか気付いてもらえたらしい。こっちに向かってくる。 ここで我々も行動に移る。 そう。きばは免許を取ったばかりなのである。やはり、練習を欠かしてはイケナイ。そして、車とはとかく危険なものである。危険なものであることを強く認識する為には責任を感じながら練習しなければ意味が無い。つーことでちろ爺はイケニエ同乗者決定。この前はけろさんが贄だったか…今滋賀県に来れば、もれなくきば運転を味わえます。にこやかにやってきたちろ爺の表情に一瞬にして死相が現れたのを、我々は見逃さなかった。
かくして淡海夫婦&ちろ爺の雄琴〜成安ドキドキ暴走ツアーが始まった。
…数分で終了。無茶苦茶近いんやもん。 ていうか、誤解の無いように、そしてきばの名誉を守る為に書いておくが、乗るたびにどんどん上手くなってきている。最初、免許を取ったその日に乗ったオレだけがイケニエと呼ぶに相応しい体験をしたと言えるかも知れない。停止、発進等々、普通に走る分には随分と上達してきた。あまりに上達したからか、雄琴駅で発進する時に初心者マークを付け忘れたくらいである。湖西線でなければ、駅前ロータリーでの急停止なぞ、怖くて出来なかった…やはり練習は湖南以外でなければ(笑)。
成安造形大学のカフェでランチを摂ったあと、淡海の夢展を見る。我々は二度目だが、やっぱり休日の午後に芸術鑑賞をするというのはノンビリしてて楽しい。優雅な休日を堪能した後は、一路三井寺へ。
三井寺は、オレ個人は多分四度目である。一度は、きばとデートで来ている。一度は、採用一年目の時に一人で来ている。一度は…多分…ごく幼い時に…多分…。 そろそろ紅葉しているかな…と多少の期待は抱いていたのだが、まだまだ緑色の部分が多かった。一部色づいている葉もあるが、どうにもどんよりとした曇り空では写真映えもしないし…と思っていたら、アレ?アレレレレ!?晴れて…来てるよ?さすが、オレの晴れ男Power!!………と、思ったら、どうやらこの日は大法要のリハーサル日だったようで。そこには多数の坊主メン。はぁぁぁッッ!!パ、パワーが違いすぎる…完敗です。
しかしおかげで紅葉の色が一気に照り映える光線状態に。もともと、オレは真っ赤に染まりきった状態よりも、緑→黄→橙→赤へのグラデーションが楽しめるくらいの方が好きだ。もっともあまりに強すぎる光線で、三重塔を撮る時なぞは逆光で苦しんだが…オレやちろ爺、それに他のカメラマンが無言でシャッターを切っていると、おばちゃんの団体がやってきた。
「いや〜綺麗やわぁ、ホラホラ、写真写真」
「イヤ、アンタ、そこで写真撮ってやぁるから邪魔したらアカンで」
「かまへんかまへん、モデルモデル。えぇてえぇて、はよ写真、写真」
「イヤ〜光強いなぁ、スポットライトみたいやで〜」
「エヘヘ〜そうかぁ、ホラ、ポーズ♪」
…強すぎます、アンタら。坊主パワーすら敵わない。勿論静謐さの欠片もない。ていうかモデルて。スポットライトて。アンタら、その写真現像したら、すっごい真っ黒の顔しか写ってないで、多分。或いはフラッシュの光で顔から上だけ真っ白か。興醒めと言うよりも悪酔いしそうなそのパワー。
三井寺境内をゆっくりと見物してから、その足で近松寺という場所に赴く。 近松寺は、大津日赤の裏手にある。裏手…と言っても、近松寺の方が完全に高台で病院を見下ろしている形になるのだが。三井寺から歩いていく場合には、三井寺の観月舞台の横の階段から下りていき、長等総合公園の中を抜けて長等創作展示館三橋節子美術館の横の階段を上っていくのが近い。
この寺には、菩提樹がある。この菩提樹、何やら特別な木らしく、植物のプロ、ちろ爺は今回これが一番の目当てだったらしい。何でも、「樹木大図説」とやらに載っている樹齢千年の菩提樹らしい。仏教絡みで良く聞く、お釈迦様がこの木の下で悟りを開いたというアレだ。日本でもお寺でよく見かけるこの名前、実はホンモノは少なくて、別の木をボダイジュと呼んでいるのだとか(この辺全てちろ爺からの受け売り)。更に言うと、お釈迦様が悟りをひらいた木と今回の菩提樹とは、また違う木らしいのだが、植物には余り詳しくないのでこの辺で容量オーバー。何はともあれ、この木が欲しかったらしい。
勿論、木自体はかなりのでかさである。そんなモンを引っこ抜いて持って帰ろうなぞとは誰も考えないし、そもそもそんなことしたら泥棒である。まぁ、木を丸ごと電車で持ち帰る泥棒なんぞ見た事がないが。自然に落ちている実を拾い、そこから発芽させてみるのだとか。…さすがプロ、と言うべきか、オレらにはそんな根性はない。つか、種から発芽させようとしたハーブは見事に失敗したのだから。ううう…一割で良いから分けてくれ、その緑の手。何ならリースでも可。
当初の目的も果たせたので、充分満足した。特に後半からは天気も良かったし、大津の街を歩き回ってちょっとした散歩気分も味わえたので気分は爽快だった。そして気分が爽快になると、やっぱり人間お腹が空くのである。だって、歩き回ったしね!! そこでお茶でもしようかと言うことで、とりあえず車に戻って店を探すことにした。どうせ大津にいるのである、その辺に幾らでも喫茶店はあろうものなのだが…そこがやっぱり我々夫婦なのだろうか。何故だか遠くに行きたがってしまう。結局、今堅田にあるお店に行こう、ということになり、一旦雄琴から南下した道をまた北上する。しかし、これがもう大渋滞。車はノロノロとしか進まず、うららかな日差しの下、まぶたはどんどん重くなり…って、オレが寝たらいかんでしょうが。必死で眠気と闘いつつ車を走らせる。
結局堅田に着く頃には、「この時間にお茶ってどーよ」な時刻だったので、急遽メシに変更する。堅田には前々から我々夫婦が行きたがっていたインド料理の店、『ラジャス&ムナ』がある。ラジャスさんとムナさんの兄弟が営んでいる店だ。以前に一度行った時は、見事に定休日だったのだ。今日は定休日ではないはずだが、閉め男として名を馳せているちろ爺同伴であるだけに、若干緊張しながら店へと足を運ぶ。
…閉まってる!!定休日でもないのに。
我々の間に緊張感と共に伝説達成の偉業を目撃した時の高揚感が走りそうになる。しかし、どう考えても定休日と言うよりは時間外のような気もする。試しに店のドアを押してみると、普通に開く。普通、こういう状況だとマスターが『スイマセン、まだ準備中なんですヨー』とか言ってくるはず………言ってこない。奥に声をかけてみる。すると、「あ〜まだ準備中です〜」と、答えた。
足が。
いや、マスター、客用の椅子で寝てるし。まぁ閉まってなくて良かったけど、さすがにただの準備中では終わらせないって事か、閉め男パワー。この日は坊主パワーと言い、おばちゃんパワーと言い、オレの晴れ男パワーの修行不足を痛感させられた日であった。 待っていても仕方がないので、近くの浮御堂まで足を運び、夕映えの浮御堂でにょろにょろと時間を過ごした。堅田の落雁として近江八景にも数えられる名勝である。まぁ、雁は飛んでなかったが…夕焼けの橙から青へのグラデーションが美しかったが、心はもはやカレーの黄土色にしか興味がなかったのは事実である。
開店時間になったので、再度ラジャス&ムナに向かう。今度は開いていた。胸をなで下ろしながら、通りに面した厨房でナンを打つラジャス(か、ムナ)の素敵な笑顔にこちらも笑顔を返しつつ、店内に入り席に着く。室内は成る程、インド風に仕上げてある。…壁とかは印刷だな…床は、全然インドっぽくないな…しかも、先刻寝てた椅子じゃないか…?これ。 細かいことは気にせず、スペシャルセットを頼む。パーラックスープ(ホウレン草入りのスープ)、サラダ、肉料理(タンドリーチキン、チキンティッカ、フライドフィッシュ)、パパド(豆煎餅)、カレー(チキンティッカマサラ・チキンカレー・キーマカレーから三種、辛さ5段階)、ナンorライス、マンゴラッシーのセット。やっぱり一通り味わいたいので、欲張ってみんなこれを頼んだ。 どれもこれも素晴らしい味だった。辛さもあるけど、その中に様々なスパイスの風味が複雑に絡み合い、程良いハーモニーを奏でている。しかしやっぱり何といっても上手かったのはカレーである。きばはキーマカレーの辛さ1(普通)、オレはチキンカレーの辛さ2(2倍の辛さ)、ちろ爺はチキンティッカマサラの辛さ3を頼んでいたが、どのカレーも美味しかった。ただ、辛さ3のちろ爺はさすがに大量の汗をかいていたが…(笑)。今回はみんなナンを頼んだが、次に行く時は他のメニューの量を抑えてもライスで食べてみようかな、と思う。勿論ナンは美味しい(て言うかかなり美味い)のだが、日本人としてはライスで食べてみたい欲求に駆られる。とにかく美味かった。そして、量が多かった(笑)。 なお、ラッシーはやっぱり欠かせない。ヨーグルトに砂糖と牛乳を加えるだけでも家庭で作れる飲み物である(詳しい作り方は知らない)が、カレーには絶妙のセットである。犬を思い出すか大腸菌を思い出すかでその人の"層"が分かる名称ではあるが、とにかくオススメである。カレーにはラッシー。繰り返すが、飲み物である。大腸菌ではない。カレーと大腸菌の組み合わせは、さすがに食欲減退モノである。
予定していたよりも、ずっと充実した休日になった。ここんとこ毎週のように通っている成安造形大学のカフェでまたランチを食べられたし、三井寺で紅葉も楽しめた上に団子も食べたし、近松寺で菩提樹の実を拾うと共にちろ爺にムカゴを教えてもらって生で食べても見たし、念願のインドカレーを食べられたし…もう、気分満腹、腹満腹。秋の日の淡海夫婦の溜息…嗚呼、世界は美味しひ。ゲップではない。断じて。
|
|